・介護のプロに、家でも実践できる認知症への対応のコツを教えてほしい?
・認知症の家族と過ごしていると、ストレスがたまる…
そんな疑問に応えます。
デイサービスで実際に起きた認知症の方への対応を、家庭での対応と合わせて解説しますね。
記事の信頼性
2020年現在、介護士と生活相談員を兼務で8年目。
ヘルパー2級取得。社会福祉士取得。
介護福祉士取得。介護支援専門員(ケアマネジャー)取得。
きっと、役に立つ情報ですので、最後までご覧ください。
1.「○○がなくなった!」 被害妄想・もの盗られ妄想 編
被害妄想・もの盗られ妄想は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つです。
対応の仕方を間違うと、介助者・家族に対し不信感が定着していまいます。
対応には重要なコツがあるので、実際の介護現場を例に見ていきましょう。
ある時、認知症の方が少し怒った顔で、スタッフに詰め寄りました。
そしたら、そのヒト、返してくれないの。」
補足
事実は、バスハイクに参加し、参加費の集金を受けたことでした。
<NGな対応例>
✖ 「バスハイクであった集金の話でしょ?」
否定は、よりマイナスな感情を増幅させます。 妄想がひどくなったり、話の解決に余計に時間がかかります。
事実かどうかより、”認知症の方が思っている事実”に合わせた方がスムーズに解決します。
<Goodな対応例>
ステップ①
ステップ①
ある程度、モノ盗られ妄想の話を聴きます。(受容)
”あなたの話を聞き入れます。味方です”というスタンスが重要です。
ステップ②
「バス以外の旅行で、まさか船で行ったことあります?(笑)」
次に、少し話をずらした質問をしたり、軽い冗談は有効です。
理由は
・質問されて本人が考えることで、マイナスな気持ちを忘れることがあるため。
・冗談がマイナスな気持ちを和らげるため。
(補足)
その場で盗られた発言があれば、一緒に財布を探す行動をとるのがベストです。
その後、「休憩でお茶を飲んで、財布探しの続きをやりましょう」などと提案します。
それで、その件は忘れていただきましょう。
お茶を出さなくても構いません。毎回、お茶を出すのも大変ですよね。
「休憩しましょう」でもよいです。
「私、手が離せなくて、洗濯ものをたたんでほしい」など依頼することもアリです。
ココがポイント
被害妄想・モノ盗られ妄想の対応には
『受容 → ずらした質問 』
『受容 → 軽い冗談 』
『受容 → 提案 』
『受容 → 依頼 』
以上4つが重要です。
2.「家に帰りたい!」帰宅願望 編
帰宅願望は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つです。
健常者には全く理解できない行動ですが、デイサービス利用初期の利用者によくある行動です。
対応には重要なコツがあるので、実際の介護現場を例に見ていきましょう。
<NGな対応例>
✖ 「何言っているんですか? ここはあなたの家ですよ。」
・根拠のないお願いや否定は、よりマイナスな感情を増幅させます。
話の解決に余計、時間がかかります。
<Goodな対応例>
ステップ①
認知症の方の要望には、まず【受容】が必ず必要です。 ”あなたの話を聞き入れます。私はあなたの味方です”というスタンスが重要です。
ステップ②
もちろん、一緒に外に出て、タイミングを見計らって休憩を促し、連れ戻ることが最善策です。 ただ、時間がそこまでとれない方にとって、難しい対応策かと思います。
次に、あなたの身内に挨拶をしたいなど、言われたら嬉しい言葉を投げかけます。 最後に、何かをお願いをする構図がよいでしょう。
ココがポイント
「家に帰りたい!」帰宅願望の対応には
『受容 → 散歩 →帰宅』
『受容 → ハートフルな会話 → 依頼 』
以上、2つが重要です。
3.「お風呂はさっき入ったわ!」 入浴拒否 編
入浴拒否は、認知症初期の関わり方が重要です。
入浴できたとしても、結果としてマイナスなイメージを持たせたら、次回以降に入浴の拒否が強くなります。
そのため、対応にはマイナスイメージを持たせないコツが必要です。
実際に介護現場でよくある場面です。
・「夜に入る。今は入らん!」
・「お風呂はさっき入った」
<NGな対応例>
言動が介助者本位でよくありません
Aさん寄りの言動ですが、傷つくかもしれません。場合によっては有効かもしれません。
「お風呂はいやな事をされる」というマイナスな印象が脳に定着し、次回の入浴時になお拒否が強くなる傾向にあります。
<Goodな対応例>
近い未来像をイメージさせてあげることは大事です。
入浴することが苦じゃないことを伝えます
(例)
ステップ① テレビのレコーダーに録画しておいた芸能人の温泉に入る場面を流す
ステップ②「お風呂は気持ち良いですね。」「温泉、入りたいですね。」など世間話をする
入浴直前にお風呂に対しプラスな情報を提供すると、拒否反応を和らげる効果があります。 お風呂へ誘った時に応じる可能性が上がります。
在宅で入浴拒否がある場合には、他にも「薬を塗る」「足の爪を切る」などの理由をつけて、浴室や脱衣所まで案内しましょう。その後、「浴槽にお湯を入れたのでどうですか」と誘ってみましょう。
ポイント
「お風呂はさっき入ったわ」入浴拒否の対応には
・『お風呂後、楽しい未来像を想像させてあげる』
・『お風呂が、面倒でなく、らくちんに入ることができることを伝える。』
・『お風呂に入りたくなる事前の気分作りをする』
以上、3つが重要です。
4. 「トイレって、何するところかわからない?」トイレでの失敗 編
高齢になると、排尿を留めるための機能低下が起きたり、認知症による脳機能低下により、トイレの意義や使い方がわからなくなることがあります。
ましては排泄という生理的で他者に見せたくない行為であるため、関わり方には特に注意が必要です。
<NGな対応例>
✖介助者の都合だけでトイレに誘う
加齢に伴い、尿意や便意を感じづらくなります。
そして認知症が進行すると、尿意を感じても意思を伝えることが困難になることさえあります。
トイレの失敗が増えるたびに、失敗しないように頻繁にトイレに誘うと、本人にとってはその気もないのに連れていかれることになり、不可解で気味悪く感じます。
そのような体験が重なることで、トイレに行くことを拒否するようになるのです。
<Goodな対応例>
トイレの時間や便意を感じる予兆行動や時間を記録しておきます。
ステップ②
記録をもとにタイミングを見計らって誘うようにすると、次第に失敗が減り、改善することがあります。
ポイント
「トイレって、何するところかわからない?」トイレでの失敗の対応には
ステップ①
トイレの時間や便意を感じる予兆行動や時間を記録する。
ステップ②
記録をもとにタイミングを見計らって誘うようにすると、失敗が減り、改善の見込みアリ。
<まとめ>
デイサービスで実際に起きた認知症の方への対応を、家庭での対応と合わせて解説しました。
自宅での認知症介護に活用していただければ幸いです。
認知症の家族を介護する際に、認知症の特徴を理解して適切に対応すれば、お互いに心身の余計な負担を減らすことが可能となります。
少しずつ学んで、認知症の方との暮らし方を明るくしていきましょう!